本品は、トルクメン族の最大部族テケ族の刺繍飾り、長方形の布です。茶の地に、中央から幾重もの長方形を描き、それぞれに紋様を施しています。布の裏は1/3ほどが白の布で、四角ばった赤い渦巻が見られ、残りの2/3が赤い布で、表布に縫い付けられています。20年ほどまえに、イスタンブルで入手したと聞いています。本品に類似し、刺繍紋様つきの長方形を幾重にも描いた布が、研究書（Amulets, Paie,ｐ.33）に掲載されています。布には、逆重ねＦ字（線つきジグザク・モチーフ）、下辺に白黒の捩り紐、紐から吊るされた、8つのコインと縦に2つ並んだ三角布などの護符が見られます。本品は、トルクメン女性の袖なし外衣で、背側に回した細長い飾り（痕跡）袖を繋ぐ布と説明しています。背中は邪悪な霊が取り憑きやすいため、背中の護符に用いるとしています。　本品の中央には、三角を基本として、上下に三角形を描き、そこから正方形、その中に2つの三角形を描き、魚のモチーフのようにも見えます。中央アジアにおいて、花や葉のモチーフに加え、魚は多産のシンボルとして描かれますので、魚のモチーフとも見なせそうです。　2番目は正方形と山形を、白、青緑、黄、黒で描き、3番目は三角でＳ字などを描き、5番目は、逆重ねＦ字（線つきジグザク）モチーフが描かれています。　本品はこのほかにも、細い四角が幾重にも施され、最も外側には細い黒布が縫い付けられています。また、両側には白黒の山形紋の紐を縫いつけ、下側に白黒紋の紐を5㌢ほど垂らし、白黒紋の先には赤糸を巻いて、糸拠れを止めています。布の下側には、護符として1センチほど赤糸の小さな房（タッセル）を付け、下側に　黒糸に黄や青などの糸を巻き、先には小さな房をつけています。　布の上側の上を見ると、2㌢ほどの輪になった布が7つほど縫いつけられ、輪の間に紐や帯を通してつり下げることができるようになっています。　本品は、手刺繍で紋様を施した布片ではなく、ミシンを用いた直線で、古くからのモチーフを描いています。中央アジアにも1930年代ころにミシンが導入されたと言われ、手刺繍にミシン刺繍が変わった歴史的経緯、それに、伝統的なモチーフと再現の試みを示す、中央アジアのエスニック護符布としても資料としても興味深い布です。　サイズ：　縦　約26㌢、幅　37センチ　赤のタッセル　約3㌢

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